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東京地方裁判所 昭和62年(ワ)6818号 判決

アメリカ合衆国カリフオルニア州 コンプトン グラツドウイツクストリート 二〇〇六

原告

ウインドサーフイン インターナ シヨナル インコーポレイテツド

右代表者

ホイール シユバイツアー

東京都渋谷区本町一丁目六〇番三号

原告

勝和機工株式会社

右代表者代表取締役

鈴木東英

原告ら訴訟代理人弁護士

三宅正雄

安江邦治

右輔佐人弁理士

松永宣行

神奈川県藤沢市小塚字前河内三九六番地

被告

株式会社ダイアナコーポレーション

右代表者取締役

田中啓三

右訴訟代理人弁護士

會田恒司

右訴訟復代理人弁護士

建入則久

右当事者間の昭和六二年(ワ)第六八一八号損害賠償請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告ら各自に対し、一〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告は、原告勝和機工株式会社(以下「原告勝和機工」という。)に対し、三四〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1(一)  原告ウインドサーフイン インターナショナル インコーポレイテツド(以下「原告ウインドサーフイン」という。)は、次の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)を有していた。

特許番号 第六三〇三五二号

発明の名称 風力推進装置

出願日 昭和四四年三月一一日

公告日 同四六年五月三一日

登録日 同四七年一月一一日

存続期間満了の日 同六一年五月三一日

(二)  原告勝和機工は、本件特許権について、原告ウインドサーフインから、次のとおり、範囲を日本国全域とする独占的通常実施権の許諾ないし専用実施権の設定を受けていた。

(1) 昭和四九年八月二〇日から同五六年三月二七日まで 独占的通常実施権

(2) 同五六年三月二八日から同五九年八月二〇日まで専用実施権

(3) 同五九年八月二一日から同六一年一月二七日まで独占的通常実施権

(4) 同六一年一月二八日から同年五月三一日まで 専用実施権

2  本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(ただし、昭和五八年七月二七日付訂正審判請求に基づき訂正したもの。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲は、本判決添付の特許審判請求公告中の訂正明細書(以下「本件訂正公報」という。)の特許請求の範囲の項記載のとおりである。

3  被告は、昭和五九年から同六一年五月三一日までの間、業として、別紙目録記載の風力推進装置(セイリングボード)の本体装置(ボード部)(以下「被告製品」という。)を販売した。

4(一)(1) 本件発明の構成要件は、次のとおりである。

A 使用者を支持する本体装置である波乗り板があること

B 推進力として風を受け入れる風力推進手段があること

C 前記風力推進手段は、

ア 円柱と、

イ 該円柱に長い端縁部で取り付けられた帆と、

ウ 前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互いに連結され、かつ、一端で前記円柱に、また、他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、

エ 該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントと

を備えることを特徴としていること

(2) 本件発明の作用効果は、次のとおりである。

波乗り板に帆を設けることによつてこれを水上ボートにかえる場合、突風や激風によつて波乗り板が転覆する危険性が大であつたが、本件発明は、突風又は激風が襲つた場合、使用者が帆から手をはなし風力により帆を風下に倒すことにより、本体装置の転覆を免れることができるようにしたものであり、更に、使用者がブームを把持し、風向きに対し、帆の位置及び角度を調節するだけで、波乗り板を使用者の望む方向に進行させることができるという作用効果を有する。

(二)(1) 被告製品は、別紙目録記載のとおりの波乗り板である本体装置(ボード部)、a(被告製品についてのa、b等の記号及び番号は、別紙目録記載の記号及び番号を指す。)であり、かつ、使用者を支持する働きを有しているので、本件発明の構成要件Aに該当するものである。そして、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物である。すなわち、被告製品には、ジョイントボツクスgが設けられているが、これは、本件発明の構成要件Bの推進力として風を受け入れる風力推進手段である、セイル及びブームを取りつけたマストの下端部を本体装置(ボード部)aに連結するためのジョイントを嵌入又は装着するための部材である。また、被告製品には、フツトストラツプhが設けられているが、これは、使用者が右風力推進手段を操作する際に、本体装置(ボード部)a上で、身体の平衡及び安定を保つために両足を差し入れて身体を本体装置(ボード部)a上に固定させるための部材であるから、通常の単なる波乗り板には設けられることのないものである。

(2) 被告製品は、右のとおりの構造及び作用効果を有するものであるから、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物であり、したがつて、被告製品の販売行為は、特許法一〇一条一号の規定により、本件特許権及び専用実施権を侵害するものとみなされるものである。

5  原告ウインドサーフイン及び原告勝和機工は、原告勝和機工製造に係るセイルボード(以下「原告製品」という。)を販売していた。

被告は、原告ウインドサーフインが本件特許権を有し、かつ、原告勝和機工が前記1(二)のとおり独占的通常実施権ないし専用実施権を有することを知りながら、昭和五九年から同六一年五月三一日までの間、被告製品を少なくとも一四〇〇艇販売した。

原告らは、被告の右行為により、原告製品の販売数量が少なくとも一四〇〇艇、金額にして一億七八〇〇万円減少したため、次のとおり損害を被つた。

(一) 原告勝和機工が原告製品を販売して得る利益は、販売価格の二五パーセントであるから、失つた利益の額は、少なくとも四四五〇万円(一億七八〇〇万円×二五パーセント=四四五〇万円)を下らない。

(二) 原告ウインドサーフインは、原告勝和機工に対する本件特許権の独占的通常実施権の許諾ないし専用実施権設定の対価として、正味販売価格の六パーセントに相当するロイヤリテイーを受ける権利を有していた。したがつて、原告ウインドサーフインは、原告勝和機工が一億七八〇〇万円相当の原告製品の販売をすることができなかつたことにより、その六パーセントに相当する一〇六八万円のロイヤリテイー収入を失い、これと同額の損害を被つた。

6  よつて、原告勝和機工は、被告に対し、前記5(一)の損害四四五〇万円(ただし、うち一〇六八万円は、原告ウインドサーフインの請求と不真正連帯債権)のうち四四〇万円、原告ウインドサーフインは、被告に対し、前記5(二)の損害一〇六八万円(ただし、原告勝和機工の請求と不真正連帯債権)のうち一〇〇万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1(一)は認める。同1(二)のうち、原告勝和機工が、原告ウインドサーフインから、(4)のとおり、範囲を日本国全域とする専用実施権の設定を受けていたことは認め、その余は知らない。

2  同2は認める。

3  同3のうち、被告が、被告製品を販売したことがあることは認める。

4  同4(一)(1)は認め、同(一)(2)は否認する。同4(二)は否認する。

5  同5は否認する。

三  被告の主張

1  被告製品は、次に述べるとおり、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物ではない。

(一) 被告製品は、フツトストラツプhを装着して販売しているものもあるが、フツトストラツプhを装着せずに販売する方が多い。フツトストラツプhが装着されていても、被告製品をそのままサーフボードとして使用するについて何らの支障もない。また、フツトストラツプhが装着されているものにおいても、フツトストラツプhは、その両端を各々一本の木ねじで止めてあるだけであつて、海岸等においても、簡単に取り外すことができるような構造となつている。フツトストラツプhを取り外した場合、ボードの略中央に長さ三〇センチ弱、幅一センチ弱の長手方向に細長の溝と、ボードの後部に直径五ミリ位の数個の木ねじをさし込む穴とがあるだけであるから、被告製品は、普通のサーフボードとなる。現に、右のフツトストラツプhを装着したまま、又はこれを取り外した状態で実用性のあるサーフボード等として広く使用されている(乙第一号証の二)。

(二) セイリングボードは、風下方面に向つて進むだけではなく、帆を自在に操ることにより風上方面その他あらゆる方向へ進むものである。このようなセイリングボードを使用者の思いどおりに進めるためには、風力によつてボードが流されてしまう(風下へ横流れする)のを防止すべく、ボードの底面中央部にダガボードが突設されてきた。本件発明の願書添付の図面中第1図にも、ダガボード20が示されており、本件明細書にもダガボードを備えている旨説明されている。ボードに右のようなダガボードが突設されている場合には、該ボードをサーフボードとして用いることは不可能である。被告製品は、このダガボードを設けておらず、サーフボード等としても使用し得る構造となつている。被告製品のようにダガボードを備えていないボードは、モーターボート等にて牽引することにより、水上スキーとしても使用することができるのである(乙第四、第五号証の各一、二)。

(三) 被告製品をセイリングボードとして使用する場合においても、本件発明の風力推進手段を用いる必然性は全くない。風力推進手段は、本件発明のもの以外にも多種存在し、被告製品にはそのいずれを用いることもできる。本件発明のものと全く異る風力推進手段としては、次のようなものを例示することができる。(1)円柱(マスト)に交差するように一本のブームを逆十字形に取り付け、該逆十字形の上下及び左右の端部を結ぶ菱形部分内に帆を配置したもの。(2)円柱(マスト)に一本のブームを、円柱とL字形(ただし、L字の垂直線部分が水平部分より少し下に飛び出た形)を形成するように取り付け、円柱とブームの交差部と円柱上端部とブームの右端部を結ぶ三角形部分内に帆を配置したもの。(3)ハングライダーの帆をボードに結合した形のウインドウエポン(乙第六号証の一ないし六)。

2  被告製品は、次に述べる点からも、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物であるとはいえない。

(一) 本件発明は、円柱と波乗り板を連結する「ユニバーサルジョイント」を備えていることを必須の要件としている。

一般に偏心、偏角が許容できる継手は(固定継手に対する用語として)「たわみ継手」と呼ばれている。たわみ継手の種類として、金属ばね式のもの、ゴム弾性のもの、ユニバーサルジョイント等があり、ユニバーサルジョイントは、たわみ継手の中の一種類である(乙第三号証)。したがつて、ゴム弾性の継手等は、「ユニバーサルジョイント」には包含されない。そして、ウインドサーフインにおける円柱(マスト)とボードとを連結する継手としては、ゴム弾性のものやポリウレタン弾性のものが多種販売され(甲第八号証の三)、実用性あるものとして用いられている。そうすると、仮に被告製品がウインドサーフインのボードとしてのみ用いられるとしても、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物ではないということになる。

なお、現在では、ウインドサーフインのマストとポードとを連結する継手一般を広く「ユニバーサルジョイント」と呼ぶことがある(甲第八号証の三)。しかし、この呼称は、当初、右の継手としての本来の意味のユニバーサルジョイントに用いられていたが、その後、ゴム弾性の継手等も用いられるようになつたことから、ウインドサーフインの部品に関する独特の呼称として、ゴム弾性の継手等を含めて「ユニバーサルジョイント」と呼ばれる場合が生じたのである。もつとも、本件明細書の特許請求の範囲の解釈については、本件発明の特許出願当時の技術用語によつて解釈されるべきところ、出願日よりずつと後に至つて、ゴム弾性の継手等を含めて「ユニバーサルジョイント」と呼称される場合が生じたのであるから、本件発明の特許請求の範囲の「ユニバーサルジョイント」にゴム弾性の継手等が含まれるものと解釈する余地はない。

(二) 特許権者(原告ウインドサーフイン)は、昭和五八年七月二七日に訂正審判請求をし(昭和五八年審判第一六五七七号)、昭和六〇年一一月二七日に訂正審決が確定し、現在の特許請求の範囲に訂正されたものであるが、「ユニバーサルジョイント」の用語が特許請求の範囲で用いられるようになつたのは、訂正後である。この訂正審判請求書には、特許請求の範囲を訂正する理由として、「実施例として記載されかつ添付図面に示されたとおりの「円柱と・・・・・ユニバーサルジョイントとを備える」ものであることを特許請求の範囲の記載中で明らかにすることは(原本の特許請求の範囲に風力推進装置として記載されていた)上記風力推進手段の構成を限定するものであり、この限定は特許請求の範囲の減縮に該る。」と説明されている(乙第七号証の一及び二)。

右の説明から明らかなように、本件発明は、願書添付の図面に示されたとおりのユニバーサルジョイントを用いることを必須の要件とするものであるが、願書添付の図面には、ゴム弾性の継手等は一切図示されていない。したがつて、ゴム弾性の継手等を用いた風力推進装置は、本件発明の技術的範囲に属さないものである。仮に被告製品がウインドサーフインのボードとしてのみ用いられる物であるとしても、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物ではないのである。

四  原告らの反論

1  被告の主張1について

(一) 被告製品は、ウインドサーフイン用として製造され、販売され、ユーザーも、一般に、これをウインドサーフイン用として購入使用するのが通例である。たまたま、波乗り板その他として使用することができるとしても、「のみに使用する物」に当たるのである。その物が、構造上、ウインドサーフイン用には絶対に使用することができないものであることを明らかにしない限り、その製品は、いわゆる「みなし侵害」のおそれがあるものとして、差止めの対象となるのである。

(二) 被告は、被告製品はサーフボード等として使用されている旨主張するが、風力推進装置(セイリングボード)の本体装置(ボード部)とサーフボードとは、そもそも、その目的及び役割が全く異なるものであり、その結果、ボードそのものの形状や構造に際立つた差異が存在するのである。すなわち、セイリングボードの本体装置(ボード部)にあつては、使用者は、水上に浮かんだボード部の上に立ち、その上でボード部に結合されたマストを回転起伏させることによつて、ボードを所望の方向に滑走させるという操作を行う。そこで、右目的にそつて、ボード部は、その上に使用者が立つた場合にも、常に、水上に浮かんでいられるようなものが要求されるのである。そのために、ボード部は、右浮力を得るに充分な長さからなつており、最短のもめでも二四〇センチメートル、大半は二五〇センチメートルないし二八〇センチメートルの長さからなつている(甲第四号証の二、同第五号証の二、同第六号証の二)。一方、サーフボードは、出現したごく初期の頃は別として、現在では二〇〇センチメートル以下のものばかりであり(甲第一〇号証ないし第一三号証)、使用者が静止したボード上に乗つて立とうとすると、ボードは沈んでしまうのである。サーフボードがそのようなものであるのは、サーフボードの目的自体からきている。つまり、サーフボードは、使用者が体の一部として使用し、快適な波乗りを楽しむものであるため、最小限の大きさで効率よく波に乗る浮力を受けられる大きさがあればよいということになる(甲第九号証の三)。このように、セイリングボードの本体装置(ボード部)とサーフボードとは、その目的及び役割が相異し、どちらかといえば、むしろ、相互に相反する目的を有しているものであるから、当然の帰結として、その構造も異なり、したがつて、セイリングボードの本体装置(ボード部)を、座興以外の目的で、サーフボードに転用するなどということは起こりえないことなのである。

(三) 被告製品は、セイリングボードの本体装置(ボード部)としての構造を有している。すなわち、被告製品には、マストを連結するジョイントを嵌入又は装着するジョイントボツクスgと、本体装置(ボード部)a上に、使用者が立つ際に両足を固定するフツトストラップhとが形成され、また、本体装置(ボード部)aの下面には、スケグiが装着されており、サーフボードの形状、構造とは全く異なるものである。

2  被告の主張2について

(一) 被告は、本件発明は、願書添付の図面に示されたとおりのユニバーサルジョイントを用いることを必須の要件とするものであると主張する。しかし、訂正後の明細書に記載されている「ユニバーサルジョイント」の実施例は、訂正前の明細書の発明の詳細な説明の項に記載されている「ユニバーサルジョイント」の実施例と全く同一の、二つ(三個の回転軸線を備えた接手、使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手)のものであり、願書添付の図面に示されているものは、訂正の前後を問わず、右の二つの実施例のうちの一つ(三個の回転軸線を備えた接手)である。右事実から明らかなとおり、訂正審判請求の前後において、少くとも、実施例における本件発明の「ユニバーサルジョイント」の範囲に広狭の変更があつたとみることはできない。したがつて、訂正審判請求書において、「発明の詳細な説明の欄において実施例として記載されかつ添付図面に示されたとおり」と述べたからといつて、右部分に関する減縮は、論理的にみてもありえない。また、特許請求の範囲の減縮が、訂正審判請求書で特に断つてした風力推進手段の限定に留まらず、当然に、「ユニバーサルジョイント」そのものにまで及び、実施例のうちの一構造例(すなわち、メカニカルな構造の継手)に限定されてしまうとする被告の主張は、訂正審判の実体を離れ、字句の片言にのみに依拠した根拠のない解釈であり、誤つている。

なお、本件発明にいうユニバーサルジョイントが「帆を波乗り板上で回転及び起伏させることができるように円柱を波乗り板に連結する接手」であつて、動力を伝達してはならないものであることは、明確に定義されているのであるから、いわゆる学術用語にいうところの「ユニバーサルジョイント」でないことは明らかであり、したがつて、本件発明における独自の用語としての解釈がなければ、その意味内容は不明のものとなつてしまう。そこで、本件明細書において、「ユニバーサルジョイント」は、「例えば三個の回転軸線を備えた接手(「継手」ではない)、又は使用者が操作しないとき推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手(『継手』ではない)」と定義したのである。右の文意は、「ユニバーサルジョイント『例えば』」として、ユニバーサルジョイントには、実施例にあげた「三個の回転軸線を備えた接手」やその他「使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」など各種のものが考えられることを例示的に挙げたのである。もし、「ユニバーサルジョイント」が、被告のいう図面に示されたもののみに限定されるなら、右部分の表現は、「例えば」ではなく、「すなわち」とならなければ日本語としておかしいことになる。

(二) 被告は、本件発明のユニバーサルジョイントには、「ゴム弾性の継手等」は含まれない旨主張する。被告のいう「ゴム弾性の継手等」なるものが何を意味するのかは必ずしも明らかではないが、被告の主張によると、「一般に偏心、偏角が許容できる継手」を「たわみ継手」と呼び、そのうちの一種類に「ゴム弾性のもの、金属ばね式のもの等」があり、「他の一種類たるユニバーサルジョイント」と対比させて、「ゴム弾性の継手等」は別のものである、というようである。しかし、被告が挙げた乙第三号証によれば、「たわみ継手」とは、偏心、偏角がある程度許容できる軸継手ということである。その意味するところは、「運転中の両軸を、偏心、偏角零で継ぐのはむずかしい」が、たわみ継手によれば、偏心、偏角がある程度許容できるので、これを継ぐことができることになるというにある。なお、継がれた運転中の両軸に回転力(動力)が伝達されることは、軸継手の機能からしていうまでもない。

したがつて、被告のいう「ゴム弾性の継手等」も「ユニバーサルジョイント」も、いずれも、二物体の一方が回転するときは他方も回転するように両物体を連結する継手を指しているのである。そうすると、被告の論理に沿つて考えてみても、「ユニバーサルジョイント」と「ゴム弾性の継手等」との比較は、相互に、たわみ継手に属するものの比較にすぎないことになるから、本件発明との対比の観点からする限り、無意味な議論である。すなわち、本件発明にいうユニバーサルジョイントは、「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結する」ものであること、つまり、少なくとも、一方の物体(円柱)を回転させても他方の物体(波乗り板)が回転しないように両者を連結する機能を有するものであることは、特許請求の範囲の記載から一見して明らかである。したがつて、本件発明にいうユニバーサルジョイントは、回転力を伝達するたわみ継手の一種類ではないこと、また、たわみ継手に属するゴム弾性のもの等とも実質的に相違するものであることは明らかである。

ところで、被告製品に使用されるジョイントは、マスト本体7とボード部aとを連結する接手であり、しかも、連結状態において、当該ジョイントは、伸縮部材8の下面に突出するボルト9を回転軸としてマスト本体のボード部に対する相対的回転を許すものである。したがつて、被告製品に使用されるジョイントは、少なくとも、一方の物体(マスト本体)を回転させても他方の物体(ボード部)が回転しないように両者を連結する機能を有するものであるから、本件発明にいうユニバーサルジョイントに該当するのである。仮に被告のいう「たわみ継手」によりマスト本体とボード部とを連結したとすれば、マスト本体に取り付けられたセイルが風を受けるたびに、ボード部はマスト本体と共に回転(又は旋回)することになる。そのような乗物は、操縦不能の危険な乗物であつて、およそ実用に供しえないものであろうことは、試してみるまでもないことである。

第三  証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求の原因1(一)の事実(原告ウインドサーフィンが本件特許権を有していたこと)は、当事者間に争いがない。

同1(二)の事実(原告勝和機工の実施権)については、成立に争いのない(本件においては、甲号各証及び乙号各証は、いずれも成立について当事者間に争いがないので、似下書証の成立の真正についての摘示を省略する。)甲第一号証(特許登録原簿記録事項証明書)によれば、原告勝和機工は、本件特許権について、原告ウインドサーフィンから、昭和四九年八月二〇日、地域を日本国全域、期間を同日から一〇年間とする専用実施権の設定を受け、昭和五六年三月二七日にその登録がされたこと、その後、昭和五九年八月二〇日、地域を日本国全域、期間を同日から特許権存続期間満了(昭和六一年五月三一日)までとする専用実施権の設定を受け、昭和六一年一月二七日にその登録がされたことが認められる(以上の事実のうち、昭和六一年一月二八日から特許権存続期間満了まで、原告勝和機工が、本件特許権について、地域を日本国全域とする専用実施権を有していたことは、当事者間に争いがない。)。

二  請求の原因2の事実(本件明細書の特許請求の範囲の記載)は当事者間に争いがなく、右争いのない事実と甲第二号証(本件訂正公報)によれば、本件発明の構成要件は、請求の原因4(一)(1)のとおりであると認められる。

三  請求の原因3のうち、被告が被告製品を販売したことがあることは、当事者間に争いがない。

四  そこで、被告製品が本件発明の風力推進裂置の生産にのみ使用する物であるか否かについて判断する。

1  被告製品を示すものであることについて当事者間に争いのない別紙目録の記載によれば、被告製品の本体装置(ボード部)a上には、マストを本体装置(ボード部)aに連結することができるジョイントを嵌入又は装着することができるジョイントボツクスg(又はジョイントボックス用穴j)が形成されているところ、これに用いるジョイントは、別紙目録第3図のとおりであつて、伸縮部材8からなるというのである。被告製品に用いるこのようなジョイントが、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジョイント」に該当するかどうかについて検討することとする。

ところで、原告らは、右の「ユニバーサルジョイント」は、本件明細書の特許請求の範囲において「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイント」と定義され、発明の詳細な説明の項においても、特定の実施例において「三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」と定義されているものであるから、被告製品に用いるジョイントは本件発明のユニバーサルジョイントに該当する旨主張し、これに対して、被告は、本件発明のユニバーサルジョイントとは、実施例に示されているようないわゆる機械的構造の継手を意味するから、被告製品に用いるジョイントはこれに該当しない旨主張するので、この点について審案する。

2  甲第二号証によれば、次の各事実を認定することができる。

(一)  本件明細書において「ユニバーサルジョイント」の語が使用されている箇所としては、まず、特許請求の範囲の項において、「……該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置。」(五頁右欄一七行ないし二一行。本件訂正公報における頁行を示す。この項において以下同じ。)との記載があるほか、発明の詳細な説明の項において、(1)「本発明は、使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置を提供する。」(三頁右欄一行ないし一二行)、(2)「特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が連結されている。」(三頁右欄一三行ないし一七行)、(3)「第1図を参照すれば使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三軸線ユニバーサルジョイント36とを備える風力推進手段とを包含する風力推進装置が図示されている。」(三頁右欄三三行ないし四頁左欄三行)、(4)「第2図を参照すれば円柱12が三軸線ユニバーサルジョイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不銹銅で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。」(四頁左欄二〇行ないし二五行)、(5)「操作時に、使用者は円柱12をユニバーサルジョイント36にて取付けてある位置の背後において波乗り板10の上面28に立ち、一方のブーム16又はブーム18をにぎる。」(四頁右欄四四行ないし五頁左欄二行)、(6)「本発明によれば、風力推進手段をそのユニバーサルジョイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、突風又は激風時に風力推進手段のブームから手を離せば、該風力推進手段はその帆に風を受けない方向へ倒れ、波乗り板を安定させ、その転ぷくを防ぐことができる。」(五頁右欄四行ないし九行)との各記載があり、また、図面の簡単な説明の項において、第2図の説明として、「第2図は第1図の線2-2における帆の回転及び起伏に使用するユニバーサルジョイントの断面図」(一頁左欄二行ないし四行)との記載がある。図面としては、風力推進装置の外観図である第1図(六頁)中に三軸線ユニバーサルジョイント36が記載されているが、同図ではその構造は不明であり、第2図(五頁)は、三軸線ユニバーサルジョイントの断面図であつて、その詳細な構造を明らかにしている。

(二)  本件明細書において、「ユニバーサルジョイント」として具体的にその構造が示されているものは、実施例である三軸線ユニバーサルジョイントのみであつて、その構造については、願書添付の図面に記載されており(本件明細書五頁2図)、また、その説明として、発明の詳細な説明の項において、「第2図を参照すれば円柱12が三軸線ユニバーサルジョイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不銹銅で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。前記締め板38、40はベース27の幾分下までの延長部42、44を備えている。この延長部42、44は不銹鋼製管46の短い区画の両側に配置されている。1/4インチ(六・三mm)直径の頭付きピン48が前記締め板の延長部42、44の孔50、52の中をのび、頭付きピン48のコツタ孔56に挿入されたコツタピン54によつて回転自在に取付けられている。不銹鋼の板で作つたクレビス58が、その側面60(その中の一つだけを図示してある)を締め板の延長部42、44の下に横方向になるよう、管46上に配置されている。1/4インチ(六・三mm)直径の頭付きピン62(第2図に断面で示す)がクレビスの側面と管46の孔64を貫通しており且つ頭付きピン62のコツタ孔に入つたコツタピン(図示せず)によつて回転自在に取付けられている。前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏させることができる。長さ3インチ(七六・二mm)、直径1/4インチ(六・三mm)の丸頭のれじ68がクレビス58のベース71の孔70を通りそこから座金72をその下の台29のほぞ孔78に入つているナツト74とロツクナツト76を通り、これによつてクレビス58をダガボード20に回転自在に取付けてある。ねじ68がクレビス58のベースを充分な遊びをおいて保持し、クレビス58を座金72に接触して回転可能としている。前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。」(本件訂正公報四頁左欄二〇行ないし同頁右欄一五行)と記載されている。

3  右認定の事実によれば、本件明細書の特許請求の範囲の項には、「該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイント」との記載があるところ、原告らは、右記載をもつて本件発明における「ユニバーサルジョイント」の構成が明確に定義されていると主張する。しかし、右記載は、「ユニバーサルジョイント」の作用ないしは機能を説明したにすぎないものであつて、これがいかなる構造のものであるか、その構成については何ら説明するものではない。

次に、発明の詳細な説明の項においては、まず、右同様の記載(前記2の認定事実(一)中の(1)の記載)があるが、この記載が「ユニバーサルジョイント」の構成を何ら説明するものではないことは、既に述べたのと同様である。このほかに、「特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が連結されている。」との記載(同(2)の記載)があり、右記載について、原告らは、「三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」というのが「ユニバーサルジョイント」の特定の実施例であることを示しており、これによつて本件発明における「ユニバーサルジョイント」の構成を明確にしていると主張する。右記載において示された「ユニバーサルジョイント」の実施例がいかなる範囲のものを指すかについての判断はしばらくおくとしても、仮に原告ら主張のように「三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」というのが「ユニバーサルジョイント」の特定の実施例であるとしたところで、右記載からは、「ユニバーサルジョイント」の実施例として「三個の回転軸線を備えた接手」、すなわち、いわゆる三軸線ユニバーサルジョイント(その構造については、前認定のとおり、発明の詳細な説明の項及び図面において明らかにされている。)が含まれることは明らかとなるものの、「又は使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」については、その作用ないしは機能を述べるだけで、具体的にどのような構成のものがこれに当たるかは一切明らかでない(前認定のとおり、本件明細書においては、三軸線ユニバーサルジョイントのほかには具体的な構成を明らかにする記載は、一切存在しない。)。また、「風力推進手段をそのユニバーサルジョイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、」との記載(同(6)の記載)についても、同様に、この記載によつては、「ユニバーサルジョイント」の作用ないしは機能は明らかとされているが、その構成は一切明らかでない。発明の詳細な説明の項におけるその余の「ユニバーサルジョイント」の記載(同(3)、(4)、(5)の各記載)は、いずれも特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントの構造を説明するものである。

また、図面の簡単な説明の項において、第2図の説明として、「ユニバーサルジョイント」の語は用いられているものの、第2図においてその構造が示されているのは、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントである。

そして、前認定のとおり、本件明細書において「ユニバーサルジョイント」の語が使用されている箇所は以上ですべてであつて、また、「ユニバーサルジョイント」の実施例についても、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントの構造が明らかにされているだけであつて、それ以外の継手について、その構造を明らかとするような説明文も図面も一切存在しない。

以上のとおり、本件明細書において用いられている「ユニバーサルジョイント」の語については、右に認定した以上に、右明細書上においてその内容ないし構造が説明あるいは図面によつて明らかにされているものとはいえない。

以上によれば、本件明細書においては、特許請求の範囲はもちろん、発明の詳細な説明の項及び図面を子細に検討しても、「ユニバーサルジョイント」については、風力推進手段を回転及び起伏自在に波乗り板に連結する作用ないしは機能を有するものであることが明らかにされているだけであつて、その構成については、その実施例として、唯一、三軸線ユニバーサルジョイントの構造が説明及び図面によつて示されているにすぎない。

4  そして、他方、被告製品においては、本体装置(ボード部)aとマストとを連結するときに用いるジョイントは、別紙目録第3図のとおりであつて、伸縮部材8からなるものであることは、当事者間に争いがない。

5  そこで、被告製品に用いるジョイントを本件明細書において「ユニバーサルジョイント」の実施例としてその構造が明らかにされている三軸線ユニバーサルジョイントと比較すると、右三軸線ユニバーサルジョイントは、前認定(前記2(二)記載)のとおり、頭付きピン48により円柱12と管46とを連結し、頭付きピン48と直交する頭付きピン62により管46とクレビス58とを連結し、更にこれを丸頭のねじ68により回転可能に波乗り板10に取り付ける方法により風力推進手段と波乗り板を連結するものであつて、頭付きピン48と頭付きピン62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、円柱12を各回転軸のまわりに回転可能とすることを通じて、波乗り板10上で起伏させることを可能としているが、他方、被告製品に用いるジョイントは、別紙目録第3図のとおりであつて、伸縮部材8からなるというのであるから、その材質自体の特性である伸縮性を利用することによつて前後左右の方向への屈曲傾斜を可能としているものであり、前記三軸線ユニバーサルジョイントにおける相互に直交する水平の二軸に相当する構造は存在しない。右によれば、被告製品に用いるジョイントと本件明細書における三軸線ユニバーサルジョイントとでは、風力推進手段を本体装置上で起伏自在とする構成において、技術的思想を異にするものというべきである。

6  そして、前述のとおり、本件発明における「ユニバーサルジョイント」について、本件明細書においてその構成が明らかにされているのは、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントだけであることからすれば、少なくとも、被告製品に用いるジョイントのように、構成部材の材質の伸縮性を利用することによつて前後左右の方向への屈曲傾斜を可能とする構造については、本件明細書においてその技術事項の開示があるものと認めることができない。

したがつて、被告製品に用いるジョイントは、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジョイント」に該当するものとはいえない。

7  このことは、次の点からも明らかである。

すなわち、甲第三号証によれば、本件発明の特許出願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初の明細書」という。)の特許請求の範囲の項には、「1 使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進装置とを包含し、前記推進装置の位置が前記使用者によつて制御でき、前記推進装置が使用者の不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。」(本件公報三頁6欄一四行ないし一九行)と記載されていて、「ユニバーサルジョイント」の語は用いられておらず、発明の詳細な説明の項には、前記2の認定事実(一)の(2)とほぼ同一の後記記載(同一項2欄二五行ないし二九行)、同(4)と同一の記載(同二頁3欄三八行ないし四三行)及び同(5)と同一の記載(同三頁5欄五行ないし八行)はあるものの、同(1)、(3)及び(6)に対応する記載はいずれもなく、他に「ユニバーサルジョイント」の語を用いた記載はない。図面の簡単な説明の項には前記2の認定事実(一)とほぼ同一の記載(同一頁1欄二〇行ないし二二行)があり、願書添付の図面についても、同(一)と同一の図面であることが認められる。

右のとおり、当初の明細書においては、特許請求の範囲の項に「ユニバーサルジョイント」の語はなく、また、前記2の認定事実(一)の(4)及び(5)と同一の記載中の「ユニバーサルジョイント」は、いずれも特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントを意味するものである。したがつて、特定の実施例である三軸線ユニバーサルジョイントを離れての「ゴニバーサルジョイント」の語は、前記2の認定事実(一)の(2)とほぼ同一の記載である「特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手によつて乗物本体に前記推進装置が連結されている。」との記載部分だけに存在することになる。そこで、右部分において「ユニバーサルジョイント」の語の意味する内容を検討するに、まず、右記載中の、「三個の回転軸線を備えた接手」と「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」との関係については、後者は具体的な構造を離れて抽象的な作用ないしは機能を説明する記載であつて、その意味する範囲は広範であり、前者も包含するものである。このように、「三個の回転軸線を備えた接手」が「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」に包含される関係にある以上、両者が、共に「ユニバーサルジョイント」の例示として、接続詞「又は」によつて結ばれる並列的な関係に立つものと解することはできない。そして、前記のような両者の内容的な関係にかんがみれば、通常の用語法としては、むしろ、「ユニバーサルジョイント」の例示としては「三個の回転軸線を備えた接手」のみであつて、「ユニバーサルジョイント例えば三個の回転軸線を備えた接手」と、それ以外の「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」とが、接続詞「又は」によつて並列的に結ばれているものと解するのが相当である。そうであれば、当初の明細書においては、「ユニバーサルジョイント」ついて、その例示として「三個の回転軸線を備えた接手」、すなわち、三軸線ユニバーサルジョイントが挙げられているだけであつて、「ユニバーサルジョイント」以外にも「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」が存在することになる。右のとおり、「ユニバーサルジョイント」は、「使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」のすべてではなく、そのうちの一部を指すものである以上、その意味する範囲は、例示されている唯一の例である三軸線ユニバーサルジョイントないしはせいぜいこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。

そして、当初の明細書の特許請求の範囲の項の記載は、前記のとおりであつて、そこでは風力推進装置と本体装置とを連結する継手については何ら触れられていないから、右記載からは、継手として「ユニバーサルジョイント」を用いたものであつても、それ以外のものを用いた場合であつても、特許請求の範囲に含まれ得ることになる。

当初の明細書における「ユニバーサルジョイント」の意味が右のようなものである以上、昭和五八年七月二七日付訂正審判請求に基づく訂正後の本件明細書においても、「ユニバーサルジョイント」の語は、他に特段の事情のない限り、右と同一の内容を意味するものとして理解すべきものというべきである。そして、本件明細書において、「ユニバーサルジョイント」の語について、その内容を定義した記載が新たに加えられたような事情のないことは、既に認定した事実により明らかであるから、結局、本件明細書における「ユニバーサルジョイント」の語は、当初の明細書におけるのと同様、三軸線ユニバーサルジョイントないしはせいぜいこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。

したがつて、前記訂正において、「ユニバーサルジョイント」の語を特許請求の範囲に持ち込むことにより、風力推進手段と本体装置とを連結する手段の構造をも構成要件の一つとした本件発明は、訂正前の当初の明細書における特許請求の範囲を減縮したものというべきであり、連結手段として、「使用者が操作しないとき風力推進手段を殆んど自由浮動状態にすることができるような接手」のうち前記のような「ユニバーサルジョイント」を用いているものだけが、特許請求の範囲に含まれるというべきである。

そして、被告製品に用いるジョイントが、三軸線ユニバーサルジョイントないしはこれに類する構造のもの、すなわち、相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものに該当しないことは、前述のとおりであるから、被告製品に用いるジョイントは、本件発明の「ユニバーサルジョイント」に該当しないものというべきである。

8  右に述べたところは、本件発明の出願経過及び訂正審判の経過をみるとき、一層明らかとなる。

すなわち、甲第一ないし第三号証、乙第七号証を総合すれば、次の各事実を認定することができる(この認定を左右するに足りる証拠はない。)。

(一)  昭和四四年三月一一日の本件発明の特許出願の願書に最初に添付した明細書(当初の明細書)の特許請求の範囲の項の記載は、「1 使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進装置とを包含し、前記推進装置の位置が前記使用者によつて制御でき、前記推進装置が使用者の不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。」(本件公報三頁6欄一四行ないし一九行)というものであり、同明細書の発明の詳細な説明の項及び願書添付の図面の記載の内容は、前記7において認定したとおりである。

(二)  本件特許権が昭和四七年一月一一日に登録された後の昭和五五年一〇月一一日、本件特許権について無効審判請求がされた(昭和五五年審判第一八八一四号)。

(三)  右無効審判請求の後である、昭和五七年二月二六日に原告ウインドサーフインは、本件特許権につき最初の訂正審判請求(昭和五七年審判第三三二〇号。第一次訂正審判請求)をした。

(四)  原告ウインドサーフインは、昭和五八年七月二七日に前記第一次訂正審判請求を取り下げ、同日、新たな訂正審判請求(昭和五八年審判第一六五七七号。第二次訂正審判請求)をしたが、その内容は、当初の明細書の特許請求の範囲の項の記載を、本件明細書記載のとおりの「1使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置。」(本件訂正公報五頁右欄一一行ないし二一行)と訂正し、発明の詳細な説明の項の記載についても、本件明細書記載のとおりの内容に訂正するというものであつた(図面についての訂正は請求していない。)。

そして、右第二次訂正審判請求の訂正審判請求書において、原告ウインドサーフインは、右の特許請求の範囲の項の記載の訂正は、「下記理由により、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする」(同訂正審判請求書一一頁一七行ないし一八行)ものであるとしたうえ、「c)さらに、上記風力推進手段について、その構成が原本の発明の詳細な説明の欄において実施例として記載されかつ添付図面に示されたとおりの「円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備える」ものであることを特許請求の範囲の記載中で明らかにすることは、(原本の特許請求の範囲に風力推進装置として記載されていた)上記風力推進手段の構成を限定するものであり、この限定は特許請求の範囲の減縮に該る。 d)乗物の一例として波乗り板が含まれること、及び風力推進手段が円柱、帆、一対のブームおよびユニバーサルジョイントを備えることは、原告の発明の詳細な説明の欄に記載され、また、添付図面を参照しての実施例の説明に示されており、従つて、本体装置及び風力推進手段を上記のように限定することは、原本の特許請求の範囲に記載されていた構成事項を、原本の発明の詳細な説明の欄に記載されていた事項に又はその事項により特定するものであると共に、これによる特許請求の範囲の訂正の前後において発明の目的は同一であるから、上記訂正による特許請求の範囲の減縮は、特許請求の範囲の実質変更には該らない」(同訂正審判請求書一四頁二行ないし一五頁一〇行)から、右訂正は、「特許請求の範囲における明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とし、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない」(同訂正審判請求書一五頁一一行ないし一四行)と主張している。更に、当初の明細書の発明の詳細な説明の項の記載の訂正に関しても、「使用者を支持するようになつた乗物の本体装置と、前記本体装置と旋回自在に協動して風を推進力として受け入れるようになつた風力推進装置を包含する風力推進機を提供する。前記風力推進装置の位置は使用者によつて制御することができ且つこのような制御を行わないとき旋回抵抗力が殆んどなくなる。」(本件公報一頁2欄一八行ないし二四行)を「本発明は、使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることを特徴とする、風力推進装置を提供する。」(本件訂正公報三頁右欄一行ないし一二行)とする訂正につき、右「訂正は、本発明が提供するのは訂正後の特許請求の範囲に記載された構成による風力推進装置であるところ、原本の記載のままでは対応関係が不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、この訂正は特許請求の範囲の減縮と明瞭でない記載の釈明とを目的とする。」(同訂正審判請求書二一頁一〇行ないし一五行)と主張し、「波乗り板10と円柱12と三角形の帆14とブーム16、18」(本件公報二頁3欄一九行ないし二〇行)を「使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三軸線ユニバーサルジョイント36とを備える風力推進手段とを」(本件訂正公報三頁右欄三三行ないし四頁左欄二行)とする訂正につき、右「訂正は、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により構成される風力推進装置は実施例に記載の構造を備える風力推進装置であるところ、その対応関係が原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、この訂正は特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」(同訂正審判請求書二三頁一六行ないし二四頁二行)と主張し、「取付けられている。」(本件公報二頁4欄一三行ないし一四行)の次に「前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏させることができる。」(本件訂正公報四頁左欄四二行ないし同頁右欄二行)を加え、「回転可能にしている。」(本件公報二頁4欄二二行ないし二三行)の次に「前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。」(本件訂正公報四頁右欄一一行ないし一五行)を加えることは、「それぞれ、訂正後の特許請求の範囲に記載された風力推進装置を構成する風力推進手段の円柱がユニバーサルジョイントにより波乗り板に連結されることにより、帆が波乗り板上で起伏と回転とを自在とするが、実施例に記載の風力推進装置の構造によれば如何にして帆がそれらを自在にするかにつき理由を明らかにすべきところ、これがされていない原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」(同訂正審判請求書二五頁三行ないし一三行)と主張している。

(五)  その後、昭和六〇年八月一二日、右(二)の無効審判請求が取り下げられた。

(六)  そして、原告ウインドサーフインの右第二次訂正審判請求が認められて、昭和六〇年一一月二〇日、訂正審決がされた。右訂正審決によつて訂正された明細書が、本件明細書である。

右認定の事実によれば、原告ウインドサーフインは、第一次訂正審判請求を取り下げて、第二次訂正審判請求をしたものであるところ、右第二次訂正審判請求において、特許請求の範囲の記載を「ユニバーサルジョイント」の語を含むものに訂正し、右訂正は「明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする」ものであると主張している。当初の明細書における「ユニバーサルジョイント」の語が、前記のとおり、三軸線ユニバーサルジョイントないしはせいぜいこれに類する相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものであるから、右第二次訂正審判請求書においても、「ユニバーサルジョイント」の語は、他に特段の事情のない限り、右と同一の内容を意味するものとして理解すべきものというべきである。そして、右訂正審判請求書において、「ユニバーサルジョイント」の語について、その内容を定義した記載が新たに加えられたような事情のないことは、既に認定した事実により明らかであるから、結局、右訂正審判請求書における「ユニバーサルジョイント」の語の意味するところは、当初の明細書におけるのと同様、三軸線ユニバーサルジョイントないしはせいぜいこれに類する相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。

したがつて、右第二次訂正審判請求に基づく訂正審決によつて、「ユニバーサルジョイント」の語を特許請求の範囲に持ち込むことにより、風力推進手段と本体装置とを連結する手段の構造をも構成要件の一つとした本件発明は、訂正前の当初の明細書における特許請求の範囲を減縮したものであり、連結手段として、前記のような「ユニバーサルジョイント」を用いているものだけが、特許請求の範囲に含まれるというべきである。

なお、第二次訂正審判請求書における「ユニバーサルジョイント」の語の意味する内容を前記のように解すべきことは、原告ウインドサーフインの、右訂正審判請求書における、発明の詳細な説明の項の記載の訂正に関する主張の内容に照らしても明らかである。すなわち、前記(四)で認定のとおり、原告ウインドサーフインは、右訂正審判請求書において、発明の詳細な説明の項の記載の訂正に関し、「波乗り板10と円柱12と三角形の帆14とブーム16、18」(本件公報二頁3欄一九行ないし二〇行)を「使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三軸線ユニバーサルジョイント36とを備える風力推進手段とを」(本件訂正公報三頁右欄三三行ないし四頁左欄二行)とする訂正につき、右「訂正は、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により構成される風力推進装置は実施例に記載の構造を備える風力推進装置であるところ、その対応関係が原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、この訂正は特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」と主張し、更に、「取付けられている。」(本件公報二頁4欄一三行ないし一四行)の次に「前記頭付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏させることができる。」(本件訂正公報四頁左欄四二行ないし同頁右欄二行)を加え、「回転可能にしている。」(本件公報二頁4欄二二行ないし二三行)の次に「前記ねじ68は垂直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。」(本件訂正公報四頁右欄一一行ないし一五行)を加えることは、「それぞれ、訂正後の特許請求の範囲に記載された風力推進装置を構成する風力推進手段の円柱がユニバーサルジョイントにより波乗り板に連結されることにより、帆が波乗り板上で起伏と回転とを自在とするが、実施例に記載の風力推進装置の構造によれば如何にして帆がそれらを自在にするかにつき理由を明らかにすべきところ、これがされていない原本の記載では不明瞭であるので、これを明瞭にするものである。よつて、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とする。」と主張しているのである。右のとおり、「訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により構成される風力推進装置は実施例に記載の構造を備える風力推進装置である」と述べ、あるいは、「訂正後の特許請求の範囲に記載された・・・・帆が波乗り板上で起伏と回転とを自在とするが、実施例に記載の風力推進装置の構造によれば如何にして帆がそれらを自在にするかにつき理由を明らかにすべきところ」と述べて、それぞれ、実施例である三軸線ユニバーサルジョイントについての記載を付加していることからすれば、結局、原告ウインドサーフインは、特許請求の範囲における「ユニバーサルジョイント」の作用をもたらすべき構成の開示としては、実施例である三軸線ユニバーサルジョイントの構造がこれに該当するものとして、第二次訂正審判請求をしたものというべきである。したがつて、第二次訂正審判請求書における右記載からも、右訂正審判請求書における「ユニバーサルジョイント」は三軸線ユニバーサルジョイントないしはせいぜいこれに類する相互に直交する水平の二軸のまわりの自由回転により起伏を自在とする機械的構造のものを意味するものというべきである。

9  以上によれば、被告製品に用いるジョイントは、本件発明の構成要件Cの「ユニバーサルジョイント」に該当せず、したがつて、被告製品は、本件発明の風力推進装置の生産にのみ使用する物であると認めることはできない。原告らの特許法一〇一条一号の規定の適用を求める主張は、理由がないものといわざるをえない。

五  よつて、原告らの本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく、いずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 若林辰繁 裁判長裁判官房村精一は転官のため、裁判官三村量一は海外出張中のため署名捺印することができない。 裁判官 若林辰繁)

目録

別紙図面及び説明書に示すとおりの風力推進装置(セイリングボード)の本体装置(ボード部)(商品名は別紙「商品名一覧表」に記載したとおり)

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

説明書

一 別紙図面の説明

(一) 第1図は風力推進装置(セイリングボード)のボード部の平面図、第2図は同側面図、第3図はジョイントの断面図である。

(二) 各図の符号は、それぞれ、次のとおりの各部材を示す。

本体装置(ボード部)・・・・・・・・a

ジョイントボツクス・・・・・・・・・g

フツトストラップ・・・・・・・・・・h

スケグ・・・・・・・・・・・・・・・i

ジョイントボツクス用穴・・・・・・・j

ナツト・・・・・・・・・・・・・3、3'

プレートボード・・・・・・・・・・・4

穴・・・・・・・・・・・・・・・5、5'

ボルト・・・・・・・・・・・・・6、6'

マスト本体・・・・・・・・・・・・・7

伸縮部材・・・・・・・・・・・・・・8

ボルト・・・・・・・・・・・・・・・9

ナツト・・・・・・・・・・・・・・・10

穴・・・・・・・・・・・・・・・・・12

二 構造

1 本体装置(ボード部)aと、推進力として風を受け入れる風力推進手段を形成するセイル、マスト、ブーム及び右本体装置(ボード部)a上で使用者が右セイルを回転及び起伏させることができるように前記マストを本体装置(ボード部)aに連結するジョイントとよりなる風力推進装置(セイリングボード)の波乗り板を形成することができる本体装置(ボード部)aである。

2 右本体装置(ボード部)a上には、前記マストを本体装置(ボード部)aに連結することができるジョイントを嵌ップhとが形成され、また、本体装置(ボード部)aの下面にはスケグiが装着されている。

商品名一覧表

DIANA 九'二"

九'

二五〇 ウィングピン

二五〇 ダブルウィングフィッシュ

二七〇 ウィングピン

二七四

二五〇

二四〇

訂正明細書

〈34〉風力推進装置

図面の簡単な説明

第1図は本発明の風力推進装置の外観図、第2図は第1図の線2-2における帆の回転及び起伏に使用するユニバーサルジョイントの断面図、第3図は第1図の線3-3におけるブームとブームとの間の円柱接合部の断面図、第4図は第1図の線4-4におけるブームとブームとの間の帆耳接合部の断面図である。

発明の詳細な説明

本発明は風力推進装置に係る。

本発明が関係する分野は特に帆の分野である。

風力推進はボートや氷上ボートばかりでなく波乗り板のようなや陸上乗物例えば氷上ボートやそり、すなわち一般的に言えば任意の軽量な小型ボートの動力装置としても考えられてきた。普通は乗物に垂直に固定しているマストに帆を設けるか又は帆とマストを帆装置と制御構の網細工にからませている。

帆を波乗り板に固定することによつてこの波乗り板としての楽しみは失われ且つ従来制御のために必要であつた熟練はもはや必要でなくなる。人々は軽量な帆の速度と感じを得る代りに帆をするに適当な熟練が必要となる。橫ゆれに対する安定性がない波乗り板に帆を取付けることによつて突風や激風によつて波乗り板が転ぶくする問題が発生する。

故に従来は備えていなかつた風力推進手段を波乗り板に設け、この風力推進手段を設けることによつて波乗り板の元の乗心地や波乗り板を突風や激風下で転ぶくさせない制御特性を失わないようにすることが必要である。

本発明の目的は風に対する感応性と速度を増大し且つ波乗り板の従来の乗心地と従性すなわち特性を増強してそれから得られるたのしみを増すようになつた風力推進手段を波乗り板に取付けることである。本発明は、使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを言み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い部で取付けられた帆と、前記円柱の方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた地端で前記帆の帆にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起伏させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることをとする、風力推進装置をする。

特定の連結例において、ユニバーサルジョイント例えば3個の回転を備えた援手、又は使用者が操作しないとき風力推進手段をんど自由浮動状態にすることができるような接手によつて波乗り板に風力推進手段の円柱が速結されている。

本発明に波乗り板にうまく利用できる。波乗り板のような橫ゆれに対する安定性の低いにせかせ装置を設けることができる。せかせと言う言葉は技術者に公知である中央板とダガボード(dagger-board)を含み、また安定性を増すために体から平らに又はななめに水中に突入したその他の突起物をも含んでいる。

本発明は殆んどすべてのとかじとりを帆を通じて行い、かじやその他の機構を設けても良いが無くてもよい。帆をあやつることによつて加速、方向転換、上手回しを行うことができる。しかし乍ら帆は回転及び起伏自在になつているから使用者が帆を保持してを安定させねばならない。風又は風時に使用者は帆を及せば、帆は直ちに風力を受けない方向に移動する。

第1図を参照すれば使用者を支持する波乗り板10と、推進力として風を受け入れる風力推進手段であつて円柱12と三角形の帆14と一対のブーム16、18と円柱12を波乗り板10に回転及び起伏自在に連結する三細線ユニバーサルジョイント36とを備える風力推進手段とを包含する風力推進装置が図示されている。前記波乗り板10はその開口22の中に挿入され且つその底部から斜めに突出したダガボード20をせかせとして備えている。前記ダガボード20の上部は波乗り板10の上面28を幾分越えてのび、あとから无分に説明するように円柱12を枢着するための台29を提供している。

円柱12は丈夫な丸い細長いフアイバグラスの軸であり、この場合この軸は軽くするため中空になつているが中な木や金で作つても良く、その下端に円筒状の木製ベース27をくさび止めしてある。前記円柱12は帆14の揺動自在マストとなり、且つ帆14の長い端縁部31に沿つて上方に傾斜したへり30の中に挿入されている。前記帆14の底部は、円柱12に近い帆14の下端縁にあるアイレツト34の中に入つているローブ32によつて、前記円柱12に取付けられている。

第2図を参照すれば円柱12が三線ユニバーサルジョイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不銹で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている緒め板38、40によつて円柱12に取付けられている。前記緒め板38、40はベース27の幾分下までの延長部42、44を備えている。この延長部42、44は不銹製管46の短い区面の両側に配置されている。1/4インチ(6.3mm)直径の付きピン48が前記締め板の延長部42、44の孔50、52の中をのび、付きピン48のコツタ孔56に挿入されたコツタピン54によつて回転自在に取付けられている。

不銹の板で作つたクレピス58が、その側面60(その中の一つだけを図示してある)を締め板の延長部42、44の下に橫方向になるよう、管46上に配置されている。1/4インチ(6.3mm)直径の付きピン62(第2図に断面で示す)がクレピスの側面と管46の孔64を貫通しており且つ付きピン62のコツタ孔に入つたコツタピン(図示せず)によつて回転自在に取付けられている。前記付きピン48、62は相互に直交する水平の回転軸を構成し、ベース27は各回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12を各回転軸のまわりに回転させ、波乗り板10で起伏することができる。

長さ3インチ(76.2mm)、直径1/4インチ(6.3mm)の丸のねじ68がクレピス58のベース71の孔70を通りそこから合72をその下の28のほぞ孔78に入つているナツト74とロツクナツト76を通り、これによつてクレピス58をダガボード20に回転在に取付けてある。ねじ68がグレピス58のベースを充分なびをおいて保持し、クレピス58を至全72に接触して回転可能にしている。前記ねじ68は直の回転軸を構成し、ベース27はこの回転軸のまわりに回転することができ、従つて、ベース27に取付けられた円柱12をこの回転軸のまわりに波乗り板10で回転させることができる。

第1図と第3図を参照すれば、波乗り板10の表面28から4フイート(120cm)のところに橫層木製ブーム16、18を円柱の橫方向に設け、且つそれらの端部を弓形に連結してある。前記ブームの円柱側の端部は1インチ(25.4mm)幅の物テープのルーブ80によつて互に連結され且つ円柱12を間に入れて該円柱に連結されている。このテープループ80は帆のへり30の三月形の孔82を通る円柱12を取りいている。前記テープループ80はい付け86によつて両側に真リング84を保持している。このリング84は、木ねじ90によつてブーム16、18に固定した真製のフツク具88と係合することによつてテープ80をブーム16、18に固定する。

第1図と第4図を参照すればブーム16、18はそれらの他端部において帆耳の端部にそれぞれ出し索の孔92、94を偏え、またねじ99によつてブーム16、18に固定された止め96、98を備えている。出し索100が一方のブーム18の止め98からそのブーム18の出し索孔94を通り、帆耳104の強した孔102を通り、第2ブーム16の出し索孔92を通り、両方の出し索孔94、92を通りそこから別のブーム16の止め96に通される。これにより、ブーム16、18はそれらの他端部において互に連結され且つ帆耳に連結される.つぎに出しをびんと張つて止め96によつてしめつけて帆14をブーム16、18の間に保持する.

操作時に、使用者は円柱12をユニバーサルジョイント36にて取付けてある位置の背後において波乗り板10の上面28に立ち、一方のブーム16又はブーム18をにぎる.し使用者が風下に進行していて方向転換したいとき、彼は帆14を前方に傾け、風の力を波乗り板10の先端部に作用させ、帆14のどちらの側面が風にさらされているかに応じて、波乗り板10を三か右に方向転換させる.これに反してし使用者が上手回し間切りをするために風にまともに向つていきたいとき彼は帆14を後方に引いて風の力を波乗り板10の後方に作用させ、波乗り板10の後部を移動させて風にまともに回つていけるようにする.彼が風にまともに向いているとき彼は単に帆14の前部に歩いて、反対側のブームをにぎつて帆を調整して風が帆14を捕え波乗り板10が新らしいコースに入るようにすることによつて上手回しを完了する.速度を調整するため帆を前方と後方に移動させる.

突風によつて波乗り板10がひつくりかえろうとするおそれのあるとき使用者は単に帆をはなして風にまかせて危険を脱する.帆14はその円柱にローブ106を備えており、これによつて使用者は容易に帆を帆走状態に引張りもどすことができる.

本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正変更を行うことができる.

本発明によれば、風力推進手段をそのユニバーサルジョイントを介して回転及び起伏自在に波乗り板に連結したことにより、突風又は風時に風力推進手段のブームから手をせば、該風力推進手段はその帆に風を受けない方向へ倒れ、波乗り板を安定させ、その転ぶくを防ぐことができる。

〈37〉特許請求の範囲

1 使用者を支持する本体装置である波乗り板と、推進力として風を受け入れる風力推進手段とを含み、該風力推進手段が、円柱と、該円柱に長い端縁部で取付けられた帆と、前記円柱の横方向に配置され、前記円柱及び帆を間に入れて互に連結され且つ一端で前記円柱にまた他端で前記帆の帆耳にそれぞれ連結された一対のブームと、該ブームをにぎる前記使用者が前記帆を前記波乗り板上で回転及び起状させることができるように前記円柱を前記波乗り板に連結するユニバーサルジョイントとを備えることをとする、風力推進装置.

FIG.2

〈省略〉

FIG.3

〈省略〉

FIG.1

〈省略〉

FIG.4

〈省略〉

〈50〉Int.Cl. B 63 h 〈52〉日本分類 84 E 8 84 J 21 日本国特許庁 〈11〉特許出願公告

昭46-19373

〈10〉特許公報

〈44〉公告 昭和46年(1971)5月31日

発明の数 1

〈54〉風力推進装置

〈21〉特願 昭44-18073

〈22〉出願 昭44(1969)3月11日

優先権主張 〈32〉1968年3月27日〈33〉アメリカ国〈31〉716547

〈72〉発明者 出願人に同じ

〈71〉出願人 ヘンリー・ホイール・シニパイツアー

アメリカ合衆国カリフオルニア州パシフイツク・パリセードス・ベイルート317

同 ジエームス・ロバート・ドレークアメリカ合衆国カリフオルニア州サンタ・モニカ・メサ・ロード385

代理人 弁理士 浅村成久 外3名

図面の簡単な説明

第1図は本発明の風力推進装置の外観図、第2図は第1図の線2-2における帆の旋回運動に使用するユニバーサルジョイントの断面図、第3図は第1図の線3-3におけるブームとブームとの間の円柱側接合部の断面図、第4図は第1図の線4-4におけるブームとブームとの間の帆耳側接合部の断面図である。

発明の詳細な説明

本発明は風力推進装置に係る。

本発明が関係する分野は特に帆並びに氷上ボートと陸上乗物の分野を含んでいる。

風力推進はボートや氷上ボートばかりでなく波乗り板のようなや陸上乗物例えば氷上ボートやそり、すなわり一般的に言えば任意の軽量な小型ボートの動力装置としても考えられてきた。普通は乗物に垂直に固定しているマストに帆を設けるか又は帆とマストを帆装置と制御構の工にからませている。

普通の帆のない乗物に帆を設ける効果はこの乗物を水上ボート又は陸上ボートにかえることである。すなわち帆を波乗り板に固定することによつてこの波乗り板とその楽しみは失われ且つ従来制御のために必要であつた熟練はもはや必要でなくなる。人々は軽量な帆の速度と感じを得る代りに帆を制御するに適当な熟練が必要となる。帆をつけるように修正した別の乗物についても同じような変化が生ずる。横ゆれに対する安定性がない乗物に帆を取付けることによつて突風や激風にょつて乗物が転ぶくする問題が発生する。

故に従来は備えていなかつた風力推進装置を乗物に設け、この装置を設けることによつて乗物の元の乗心地や制御特性を失わないようにすることが必要である。

本発明は風に対する感応性と速度を増大し且つ従来の乗心地と操縦性を増強してそれから得られるたのしみを増すようになつた風力推進装置を乗物に取付けることである。使用者を支持するようになつた乗物の本体装置と、前記本体装置と旋回自在に協働して風を推進力として受け入れるようになつた風力推進装置を包含する風力推進機を提供する。前記風力推進装置の位置は使用者によつて制御することができ且つこのような制御を行わないとき旋回抵抗力が殆んどなくなる。

特定の実施例において、ユニバーサルジョイント例えば3個の回転軸線を備えた接手、又は使用者が操作しないとき推進装置を殆んど自由浮動状にすることができるような接手によつて乗物本体に前記推進装置が連結されている。

前記風力推進装置は乗物の本件に枢着した円柱と、これに取付けた帆とを包含している。使用者か帆の片側又は両側を把持できるような装置を設けている。すなわち帆をびんと張るたの円柱上に横方向に取付け手で保持するようになつたブームを設ける。特定の実施例において前記円柱に横ざまに且つ円柱を間に入れてアーチ状に連結される1対のブームを設ける。

本発明は水上や氷上ボートや上乗物に使用することができる。本発明はヨツトや小型自動車やカスーやこぎ舟等に使用できるが、波乗り板や氷上ボートやスケートボートやそりにもうまく利用できる。波乗り板のような横ゆれに対する安定性の低いにせかせ装置を設けることができる。せかせと言う言葉は航海技術者に公知である中央板とダガボード(dagger-board)を含み、また安定性を増すために体から平らに又はななめに水中に突入したその他の突起物をも含んでいる。

本発明は殆んどすべての操縦とかじとりを帆を通じて行い、かじやその他の操縦機構を設けても艮いが無くてもよい。帆をあやつることによつて加速も方向転換も上手回しを行うことができる。しかし乍ら帆は旋回自在になつているから使用者が帆を保持してを安定させねばならない。突風又は激風時に使用者は帆を離せば、帆は直ちに風力を受けない方向に移動する。

第1図を参照すれば波乗り板10と円柱12と三角形の帆14とブーム16、18とを包含する風力推進装置が図示されている。前記波乗り板10はその本体部に設けた開口22の中に挿入され且つその底部から斜めに突出したダガボード20をせかせとして備えている。前記ダガボード20の上部は波乗り板10の上面28を幾分越えてのび、あとから充分に説明するように円柱12を枢着するための台29を提供している。

円柱12は丈夫な丸い細長いフアイバグラスの軸であり、この場合この軸は軽くするため中空になつているが中実な木や金属で作つても良く.その下端に円筒状の木製ベース27をくさび止めしてある。前記円柱12は帆14の揺動自在マストとなり、且つ帆14の長い端縁部31に沿つて上方に傾斜したへり30の中に挿入されている。前記帆14の底部は、円柱12に近い帆14の下端縁にあるブイレツト34の中に入つているローブ32によつて、前記円柱12に取付けられている。

第2図を参照すれば円柱12が三軸線ユニバーサルジョイント36によつて前記台29に連結されている。前記ジョイント36は全体を不銹で作り且つ木ねじ37によつてベース27の両側に保持されている締め板38、40によつて円柱12に取付けられている。前記締め板38、40はベース27の幾分下までの延長部42、44を備えている。この延長部42、44は不銹製管46の短い区画の両側に配置されている。〈省略〉インチ(6.3mm)直径の頭付きピン48が前記締め板の延長部42、44の孔50、52の中をのび、頭付きピン48のコツタ孔56に挿入されたコツタピン54によつて回転自在に取付けられている。

不銹の板で作つたクレピス58が、その側面60(その中の一つだけを図示してある)を締め板の延長部42、44の下に横方向になるよう、管46上に配置されている。〈省略〉インチ(6.3mm)直径の頭付きピン62(第2図に断面で示す)がクレピスの側面と菅46の孔64を貫通しており且つ頭付きピン62のコツタ孔に入つたコツタピン(図示せず)によつて回転自在に取付けられている。

長さ3インチ(76.2mm).直径〈省略〉インチ(6.3mm)の丸頭のねじ68がクレピス58のベース71の孔70を通りそこから座金72をその下の台29のほぞ孔78に入つているナツト74とロツクナツト76を通り.これによつてクレピス58をダガボード20に回転自在に取付けてある。ねじ68がクレピス58のベースを充分な遊びをおいて保持し、クレピス58を座金72に接触して回転可能にしている。

第1図と第3図を参照すれば、波乗り板10の表面28から4フイート(120cm)のところに積層木製ブーム16、18を設け、且つそれらの端部を弓形に連結してある。前記ブームの円柱側の端部は1インチ(25.4mm)幅の織物テープのループ80によつて互に連結され且つ円柱12に連結されている。このテープループ80は帆のへり30の三日月形の孔82を通る円柱12を取り巻いている。前記テープループ80はい付け86によつて両端に真リング84を保持している。このリング84は、木ねじ90によつてブーム16、18に固定した真製のフツク具88と係合することによつてテープ80をブーム16、18に固定する。

第1図と第4図を参照すればブーム16、18はその帆耳の端部にそれぞれ出し索の孔92、94を備え.またねじ99によつてブーム16、18に固定された索止め96、98を備えている。出し索100が一方のブーム18の索止め98からそのブーム18の出し索孔94を通り、帆耳104の補強した孔102を通り、第2ブーム16の出し索孔92を通り、両方の出し索孔94、92を通りそこから別のブーム16の索止め96に通される。つぎに出し索をぴんと張つて索止め96によつてしめつけて帆14をブーム16、18の間に保持する。

操作時に、使用者は円柱12をユニバーサルジョイント36にて取付けてある位置の背後において波乗り板10の上面28に立ち、一方のブーム16又はブーム18をにぎる。若し使用者が風下に進行していて方向転換したいとき、彼は帆14を前方に傾け、風の力を波乗り板10の先端部に作用させ、帆14のどちらの側面が風にさらされているかに応じて、波乗り板10を左か右に方向転換させる。これに反して若し使用者が上手回し間切りをするために風にまともに向つていきたいとき彼は帆14を後方に引いて風の力を波乗り板10の後方に作用させ、波乗り板10の後部を移動させて風にまともに向つて行けるようにする。彼が風にまともに向いているとき彼は単に帆14の前部に歩いて、反対側のブームをにぎつて帆を調整して風が帆14を捕え波乗り板10が新らしいコースに入るようにすることによつて上手回しを完了する。速度を調整するため帆を前方と後方に移動させる。

突風によつて波乗り板10がひつくりかえろうとするおそれのあるとき使用者は単に帆をはなして風にまかせて危険を脱する。帆14はその円材にローブ106を備えており、これによつて使用者は容易に帆を帆走状態に引張りもどすことができる。

本発明の範囲から逸脱することなく多くの修正変更を行うことができる。

特許請求の範囲

1 使用者を支持するようになつた本体装置と、前記本体装置と旋回可能に協働し且つ推進力として風を受け入れるようになつた風力推進装置とを包含し、前記推進装置の位置が前記使用者によつて制御でき、前記推進装置が使用者の不在のとき旋回防止力を失うことを特徴とする風力推進装置。

FIG.1

〈省略〉

FIG.2

〈省略〉

FIG.3

〈省略〉

FIG.4

〈省略〉

特許審判請求公告

〈省略〉

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特許公報

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